毛利先生との出会いは、大学2年の春だった。
同級生とカルテットを始めた私は、ある日、某音楽祭で、原田幸一郎先生の公開レッスンを受ける事になり、受講曲ドボルジャークのアメリカを来る日も来る日も練習していた。
その音楽祭は、室内楽がメインになっていたのだが、タイムスケジュールにゆとりが有ったのか、講師の先生と自由にお話、質問できる時間がとられていた。
講師陣は、原田先生はじめ、故数住 岸子氏、そして毛利先生。
他に誰がいらしてたか失念してしまったが、その当時活発だったNADAのメンバーが中心になっていた筈である。
私たちのグループは、毛利先生のレッスンを受ける予定は無かったのだが、講師の先生への質問タイムを利用し、私は毛利先生の部屋を緊張しながら訪ねていった。
幸いな事に(勿体無い事に)私達以外は誰もいなかった。
先生が優しそうな笑顔で「今回何を弾くの?」と聞かれ「アメリカです」と私が答えると、先生は私の楽器をとって、アメリカ第2楽章のチェロ独奏部分を演奏なさった。
息が止まりそうだった。
普段自分が弾いてる楽器からこんないい音が出るなんて・・・
難しくて弾くのが恥ずかしいと思ってた旋律をこんなに美しく、感動的に弾けるなんて・・・
それから私は、常に感じていた技術的な問題を質問し、先生はそのすべての疑問に、丁寧に解りやすく答えて下さった。
それは、本当に短い時間だった筈だが、私にとってはとても長く、そして、忘れられない時となった。
この先生についていけば間違いないと確信した時であり、生涯の師とし、尊敬できる人に出会えた瞬間である。
あの日以来、先生より尊敬できる人には出会えないだろうな、もし出会えたら、それだけで生まれてきて良かったと思えるだろうな、と考えている。
この日以来、レッスンを通じ、週一度お会いし、教えを受けるようになるが、本当に根気強く、丁寧に、妥協せずに教えていただいた。
この写真は、その私の自慢の先生と出会った時の写真である。
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