マスタークラスなどで色々な先生に教わる毎に、私の楽器がどの位なるか知りたいので、私の楽器弾いて頂けないでしょうか?とお願いしてきた事は前述した。

同様に、必ず質問してきたことがある。

「先生が若い頃、あるいは今、毎日欠かさず行っている練習があったら教えてください」という事である。




チェロの毎日の練習

毎日の練習について、大変興味深い答えをくださったのがビルスマで、「私は演奏中絶対○○から○○を○○○ない」(企業秘密)。

実はこの事(練習というか)、毛利先生より、先生の師、シャピロが言ってた事を聞いて知っていたので、毛利先生に報告すると、毛利先生の見解も話してくださって興味深かった。

そして大多数の先生の毎日の練習の答えが、音階とポッパーだった。

音階

音階は必須というか、私の場合でいうと芸大の入試、1次試験に多種多様の音階があり、受験生当時毎日3時間位音階を練習した。

これだけは今も胸を張って練習したと言えると思っている。

毎日ゆっくり丁寧にメトロノームを使って練習し、録音をとり、音程、音ムラとかがないかをチェックしながら根気強くコツコツさらった。

今でも当時程時間は取れないが、もちろん音階は必ず練習する。

プロのスポーツマンがちょうど準備運動、柔軟運動する様なものである。

音階で忘れられないのが、恩師バルトロ先生と、マスタークラスでお世話になったノータス氏で、バルトロ先生に、「どのように練習すれば、私はその先生のテクニック身につけられますか?」と質問すると、先生は必ず「トーンライター(音階)」と答えて、それ以上は企業秘密になさっていた。それが右手のテクニックでも。。。 

ノータス先生はどんな早朝でもレッスン前、必ず一人で音階を練習していらした。

先生手書きの音階の譜面を門下生に課題とし取り組ませており、それを頂いた私もそれを座右の銘とし、今でも常に譜面台にのっていて、旅先には必ず持っていく。

ワルター・ノータス『音階の練習』

因みに、上の画像がノータス先生手書きの『音階練習』になります。

朝早くから音階を1人練習するノータス先生をみて、どんな大家になっても毎日やる練習は同じなんだな、と思ったものだったし、若い時に沢山練習したら、将来は音階なんか練習しなくてもスラスラ弾けるようになるかな、と思っていた自分の浅はかさを笑いたくなったりもした。

真剣に黙々と音階を練習するノータス先生の背中は、今なお私の瞼に焼きついている。

そして、ポッパーなのだが・・・

ポッパー

ダヴィット ポッパーは1843年プラハ生まれのチェリストで、ここでいう毎日の練習ポッパーというのは、彼の「40の練習曲」のことである。

ばよりん奏者がパガニーニのカプリス必修なように、ピアニストがショパンの練習曲必須なように、チェリストにとってもポッパーの練習曲は避けては通れないのである。

残念ながら・・・難しいんです、この練習曲。。。

私ももちろん取り組みました。。。

練習曲の1番を開いてちょっと弾いてみる。

なんとなく楽しい感じだ。

これはいいと思い続けると、A線上で跳躍がうにうに出てくる。

私が跳躍苦手と知ってるのか!と言いたくなるのを我慢しつつ、鍛錬鍛錬と思いアヤシイ音程のまま進んでいくと、ポッパー氏、私の弱点をつくだけで飽き足らないのか、驚いたことに楽器の性能上の弱点もついてくる。

一弦またいだりとか・・・もうこの段階でポッパーという男がどういう人間か解ってくる。

人の欠点をあらわにする奴なのだ。

私の身近にも、私の弱点を決して見逃さずに糾弾し続けている名伯楽がいるが、ポッパーよ、お前もか・・・と思いつつ1番を諦め練習曲2番にすすむと、2番は美しい。

開放弦もでてくるので、楽器もなってくる。

これはいいと思い続けると・・・やはり・・・跳躍ウネウネが・・・

ポッパー、お前は魔導師刃苦労か!(この人物はフィクションで、実在の人物とは一切関係ありません)と思い、練習曲3番に進むと、フラットが5つ・・・。

この時点でブルーなのだが、弾き始めるとこの曲も美しい。

ちょっとセンチメンタルな気分になりながら、良い気分で弾いてると、人間の指の中指と薬指がくっつきやすいという、チェロを弾くには不利な点をネチネチとついてくるのだ。

その上、右手もクネクネしだして、移弦の度に音ムラができ、聴くに耐えなくなってくる。。

ダーと思い4番に進むと、もううんざりするくらい難しい。。。

しかも親指攻撃!それも執念深く。。。

ポッパー、お前は大魔王喪宇理か!(このキャラはフィクションで、実在の名伯楽とは一切関係ありません)と思い、ばーっと楽譜みると、最後までまあ徹底して難しそうなのだ。。。

これを毎日・・・ため息しかでてきません。。。

ちなみに毛利先生(実在の名伯楽)は昔、朝ポッパーのエチュードばっと開いて、その開いた所を一日中練習したそうです。。。

レッスンでもポッパーは大体覚えていらっしゃるようで、お手本を楽譜見ずに示してくださる度に、「よく覚えてるな~!やっぱり僕も相当必死で沢山さらったんだね~。サトウくんも頑張ってね~!」と、ご自分で感心しながら、ナンダカ私は打ちひしがれるような励ましを貰ってばかりいた。

因みに私はオッケー頂いたエチュードでも、3日位弾かないともう弾けなくなります。。。

年に何回か、私は基本に帰ろうと思いたち、ポッパーのエチュードを引っ張り出してきては、1番をさらい始めるが、あっという間につっかかり挫折、という事を繰り返している。

お陰で1番の最初のほうだけは常に暗譜している。

どの先生も毎日の練習に挙げたポッパーのエチュード、毎日やったのがウソだったら承知しないぞ!呪いをかけるからな!と思いつつも、あの執念深いエチュードを看破した人には、呪いは効かないだろうな・・・

と思いつつ、私も呪いをかけられた時の為にもポッパーさらわねば!

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